知床の森のガイド ゆらり

太陽の暈が二重にかかりました。



楽しい仲間との散策を
祝福してくれているようでした。

連日のように知床五湖を歩いていますが
山の雪も緑の濃さも水面の美しさも
一日として同じ日はありません。

　（二湖　6/25）

　（二湖　6/26）
その日に見せてくれた姿を堪能します。

いつもの景色も
見る人の心次第で
より美しく見えます。





写真の腕前は、さておき。

まぼろしの沼はまだまだ水量が多く、
水の中から生えているように見える木々がとても神秘的。

日に日に濃くなる緑も
曇り空の日には
優しい色合いで訪れる人を迎えてくれます。

とても静かなまぼろしの沼。
深い森にひっそりとたたずむ姿は
本当に神秘的。

沼の周りの森では
ギンリョウソウが始まっていました。
　（ギンリョウソウ三兄弟）

海からの冷たい霧が
やんわりと断崖を包み込みます。


すっかりワラビ畑になった草原を歩いていくと

産み落とされて間もない赤ちゃんジカ

まだ毛の一部が濡れていたり
ぐったりとした様子で
私の姿を目で追うのがやっとだったり

なんて間の悪い···

さっき追い払ってしまったあのシカの気持ちを思うと
自分の無神経さが恥ずかしい。

しばらくして、振り返ると
母ジカが心配そうにこちらを見ていました。


無事に育ちますように。

霧に包まれた羅臼湖への道は、
まだまだ雪がたくさん残っていました。

大きな雪渓をいくつも渡って歩いた先は、
きらきらとした水滴をまとった
小さな花々。

　(ワタスゲ)
(チングルマ)　

雪の下からようやく起き上がったサクラが
たくさんの花を付けていました。

母の後ろを必死でついていったり
　(エゾシカ)

兄弟でじゃれあったり
　(キタキツネ)

今日もみんな
元気です。

晴れの日をついつい喜んでしまうことが多いのですが、
しっとりとした曇りの日の方が
緑が美しいと思います。

強い陽射しを受ける木々もとても華やかで素敵ですが、
発する力が強すぎて、ややもすると
押し潰されてしまいそう。

今日のように
湿り気を帯びた曇り空のもとで過ごす森は、
生きとし生けるものすべてを見守っているかのような
優しい眼差しを感じます。

まだ６月。
新しい命が次々と生まれる季節です。

ヒグマの親子。
双子ちゃんを連れていることはよくありますが、
これは三つ子で生まれたようです。

（大いなるピンボケ画像。母の後ろにテケテケとついていく三つ子ちゃん）

子らを守るために、母グマは迫力満点。
うっかり近づくと、
猛然と走ってきて人間を威嚇します。

どの生き物も
母は強し。

湿度が高く、あまり風のない知床五湖。
一斉に羽化したトンボの大群。


湖面は比較的穏やかで、
対岸の景色がきれいに映り込んでいました。
（四湖）　

　（実物か鏡像か見紛う）

標高700ｍ付近にある羅臼湖への道は
半分まだ雪の中でした。
　（二の沼）
（三の沼）　

散策路も雪に隠れているところが多く、
良く知っていないと簡単に迷ってしまいます。

雪が融けたところでは
少しずつ花が咲き始めました。
（チシマザクラ）

（チングルマ）

廃道になる予定の木道

すっかり朽ちた姿が何とも言えず好きでしたが、
もう時代に合わないようです。

新しい道も完成しているようでしたし、
いずれ撤去されるでしょう。

人間の力の及ばなさをしみじみ感じるものは
だんだん姿を消し、
人間にとって快適なものだけに囲まれていきます。

知床五湖から眺める知床連山。

　（二湖）

谷筋に残る雪は日に日に少なくなり、
毎日表情が変わります。

例年ならぶり返す寒さが全くなく、
晴れて暑い日が順調に続いています。

森が茂るにつれて光が届かなくなった林床では
花は少なく、
代わりに森の上でたくさんの花が咲き始めました。

　（オニグルミ）

（ホオノキ）　

　（シウリザクラ）

ちょろちょろと湧き出す水は
緩やかな流れになり
湿性の植物を育みます。
　（コケが美しい湿地帯）

見応えのある大きなミズバショウ群落。
人知れず繁茂する多くの植物に圧倒されます。

ヒグマも利用する
豊かな森。

（ヒグマが食べたばかりのミズバショウ）

まぼろしの沼へは
小さな流れを渡って向かいます。

雪融け水は
長靴を通してもその冷たさが伝わってきます。

沼は水をたたえて大きく、
いつもと変わらぬ静かな姿で迎えてくれます。

（まぼろしの沼に映る羅臼岳）

森の中では
新しい命が始まっていました。

（イタヤカエデと左奥はトドマツの発芽）

話し声を掻き消すようなセミの騒がしさ。
新緑がまばゆいはずの森は
強い日差しを受けて、濃い緑。

なんだか初夏を飛び越えて夏が来てしまったような知床。
　（フレペの滝）

まだまだ
草原は緑が濃くないし、
セミも夏のセミではなく、ハルゼミなんだけどね。

山登りは好きで、以前からちょこちょこと登っていますが
近くにある標津岳は今日が初めての挑戦。
少し風邪気味でしたが、山のパワーを信じていざ出陣。

登山道は登りやすく、
きらきら輝く湧き水、見事なダケカンバ帯、
満開のチシマザクラが次々と出迎えてくれる
何ともワクワクする山でした。
　（清流のコケ）

（チシマザクラ）　

山頂は思いのほか開けていて
残雪の斜里岳が
ご褒美だとばかりにお出迎え。
　（標津岳山頂）

あまりの暑さにバテバテでしたが
いつの間にか風邪っ気もどこかへ吹き飛んでいました。
山パワー、恐るべし。

あどけない表情を見ると
野生の生き物も人間も
つい微笑んでしまいます。
　（親子ジカ）

（子ギツネ）　

木漏れ日を受けて輝きに満ち溢れた森


透明な流れの中でオショロコマは安心して遊び
刻々と変化する光の中で緑はその濃さを増す

桃源郷にでも迷い込んでしまったかのような
あまりにも無垢で清浄な森

はかないゆえの
美しさ

朝から風が強く
すっかり雲の中だった知床連山。

夕方にかけて雲が取れ、
清々しい姿が湖面に映りました。
　（三湖）